家が古いから夏は暑くて、冬は寒い・・・
断熱工事をしようにも基準や、やり方がわからないから困っている
というお客様、多いと思います。
実際 私もリフォーム会社へ入社するまでは、全く分かっていませんでした。
勉強、施工、体感、実感しましたが、”断熱”というものはとても奥が深いと思います。
そして何よりこれは目に見えて実感できるものではなく、数値には基づきますが、感覚の話です。
そこが一番難しいところではありますが、
”断熱リフォーム!”や”断熱材にこだわっています!”と、宣伝する会社が多いなかで、
本当に正しいことを言っているのか?は基礎知識がないと判断ができません。
ここでは断熱性能が低いことで起こる不具合や、それを解消するメリット、
解消するためにはどんな方法があるかなど基礎的な部分を解説していきます。
これを読めば、断熱の考え方や、メリットなどの基礎がわかります。
断熱性を上げることで得られるメリット
まずは、断熱工事をすることによるメリットを書いていきます。
内容の細かい部分は次項で書いていきます。
快適な生活
これが一番です。
せっかく心身ともに休まるはずの家で、寒いだの暑いだの言いたくありませんよね?
断熱工事をすることにより、築年数が経った寒い家でも快適に過ごすことが可能です。
結露やカビなどによる建物の劣化を防ぐことができる
結露が起きてしまい、ガラスがビチャビチャになり、タオルで拭くことから朝が始まる・・・
そんなことありませんか?
また、雫が窓枠に垂れてしまい、窓枠の化粧シートが剥がれて無惨な姿になっていませんか?
これらの現象は、断熱工事をすることで全て解決します!
冷暖房効率が上がり、光熱費が安くなる
エアコンの暖房温度を上げても、ストーブの温度を上げても部屋が一向に暖かくならないことありませんか?
そして、エアコンやストーブが頑張ってくれているおかげで、光熱費がすごい金額になっていませんか?
これも断熱工事をすることで全て解決します!
ヒートショック現象の可能性を抑える
何よりも怖い、ヒートショック現象
この可能性を、ほぼ起きない状態まで予防することができます!
状況もあるので完全にとは言い切れないと思いますので、ほぼないと書かせてもらいました。
断熱性が低いことで起きてしまうこと
夏暑く、冬寒い
暑い・寒いの原因はなんだと思いますか?
建物の室内温度の変化で、原因の約70%を占めるのが窓からの熱の出入り(流入出)です。
どれだけ室内で温度の調整を冷暖房やストーブでしようとしても、窓の性能が低かったり、古かったりするだけで
窓から温度が逃げる。そして外気温が室内へ入ってきてしまい室内の温度の調整が出来ません。
その結果、夏は暑く、冬は寒いとなってしまいます。
その次に考えるところは、床や、壁の内部にある断熱材になってきますが、
まず一番に解消すべき問題は窓です。
窓に結露が起きてしまう
断熱効果が低い時は、寒い日はガンガン暖房をかけたり、ストーブを炊いたりして室内の温度を上げることに必死になると思います。
その結果、外部と内部に温度差が生じて、ガラスに結露が現れること、ありませんか?
朝起きると、ガラスがびちゃびちゃになっていませんか?
結露が起きることにより、ガラスに雫が伝い、下に落ち、窓枠が水を吸い、窓枠の化粧シートが剥がれてしまったり、
そこから発生する湿気で柱が腐ってしまったりと、良いことはありません。
冷暖房効率が悪く、光熱費が高くなる
最近の冷暖房器具はとてもかしこいです。
部屋の温度をセンサーで自動検知し、寒ければ温め、暑ければ冷やします。
ところが、前述の通り、窓の断熱性能が低ければこの”かしこさ”がアダとなります。
必死に冷やしても、窓から外の暑さが入ってきてしまい、室内温度が下がらない。
それを検知し、また必死に冷やそうとして頑張ってしまう。負の連鎖です。
その結果、頑張り過ぎた代償は光熱費として襲ってきます。
そして設置してる冷暖房器具の年式が古いともっとコストパフォーマンスが悪くなり、割高となります。
断熱性能が低いとランニングコストも下がることはありません。
ヒートショック現象が起きてしまう
ヒートショック現象とは何か?
下の画像をご覧ください
ヒートショック現象とは、入浴中に意識障害を起こし、”浴槽で溺死”、”洗い場で転倒し殴打で死亡”などが挙げられます。
ヒートショックを起こす原因は、室内の温度変化に対して、血管を細くし体の熱を逃さないように調整をします。
血管が縮むことで血液が少なくなり、血圧が上昇します。
逆にお風呂につかったり、シャワーで温かい湯を浴びたりすると、血管が膨張し膨らみ、血圧が下がります。
その結果、心筋梗塞・不整脈・脳梗塞などの意識障害が起きてしまい、死亡事故につながるのです。
令和3年度 交通事故での死亡者数は2,636人です。
令和元年度のお風呂での事故等、死亡者数は 4,900人でした。
交通事故の死亡者数よりも、お風呂での死亡者数の方が年間多いのです。
4,900人全てがヒートショック現象によるものではありませんが、どれだけお風呂が危険な場所かはお分かりかと思います。
断熱性が低くなる原因
断熱性能が低いと言っても、理由は様々です。
床・壁・天井 へ 断熱材が入っていない
リフォームを考える建物は、築年数が30年以上の家が大半です。
そして30年前の家というのは断熱材がそもそも入っていないことが多いです。
床下はそのまま木下地が見えている状態で、床下からの冷えがそのまま室内へ現れます。
壁の内側には、ほとんどのご自宅には”土壁”が入っていることが大半です。
この”土壁”は入っていない状態よりかは入っている方が多少の断熱効果はあるでしょうが、
目的が”断熱”ではないため効力は薄いです。
天井も同じです。断熱材は入っていません。
今の環境だと、温暖化が進み、寒さより暑さの方が問題です。
2階の暑さは1階の比ではないと思います。
暑さの根本的な原因の直射日光は屋根が受け止めます。
直射日光は受け止めますが、その暑さは屋根の裏側 小屋裏に溜まります。
その小屋裏の熱気が室内へ天井を通して侵入してきて室内温度が高くなります。
窓がシングルガラス(単板ガラス)になっている
室内温度の変化の70%は窓(サッシ)が原因です。
既存のサッシの材質や、ガラスの枚数で断熱性能は大きく異なります。
たとえば、サッシの枠がアルミで、ガラスが一枚のシングルガラスだった場合は、ほぼ断熱性能はありません。
気密性が悪い
築年数が経っている建物は、今の新築のように気密性が高いわけではありません。
それは当たり前です。
今の重要視されている機密性は、昔はそこまで気にされていませんでした。
逆に、自然の風を取り入れて温度が保てるように風通りの良さが重視されていました。
また、経年劣化に伴い、障子の隙間や、壁と柱との隙間が年月をかけて生まれ、隙間となって表面的に現れてきます。
隙間があることにより、室内の空気の出口となり、外からの空気の入り口にもなります。
断熱性を上げる方法
断熱材を充填する
ひとえに、断熱材を充填すると言っても、2パターンやり方があります。
内張り断熱
内張断熱とは、建物の室内側へ断熱材を充填する方法です。
木造住宅や、他の構法でも採用されているオーソドックスな断熱方法です。皆さんのイメージする断熱もこれだと思います。
柱と柱の間に断熱材を充填し、ボードを貼ってクロスで隠す。
断熱材充填時に、隙間を気密テープなどで塞ぐことが大切です。
外張り断熱
外張り断熱は柱と柱の間ではなく、文字通り外側・外壁側に断熱材を施工する方法です。
画像のように、外壁の仕上げ材と柱との間に施工していきます。
木造住宅では最近は見かけるようになりましたが、どちらかというと、鉄筋コンクリート造や、パネル工法の建物に
よく見られる方法です。
サッシ本体を交換する、ガラスのみをペアガラス(複層ガラス)へ交換する、内窓を設置する
サッシだけでも方法がいくつかあります。
- ガラスをペアガラスに交換する(ガラス交換)
- サッシはそのままで、内窓を設置する(2重窓)
- サッシ本体を取り替える
それぞれの詳細はまた別記事を書きますが、結論を言います。
一番 断熱効果が高いのは、サッシ本体を取り替え、さらに内窓をつけることが一番断熱性能は高いです。
ただここまでしなくても大丈夫だと思います。
特にリフォームとなると、最初が寒い状態なのでサッシを入れ替えるだけでも相当暖かく感じられると思います。
隙間を埋めて、建物の気密性を上げる
断熱材充填と重なる部分もありますが、断熱材を充填する場合、隙間がないように機密テープでしっかりと施工することや、経年により劣化をして傾いている建具の調整をするなどして、隙間を少なくしてい気密性を高めることです。
もっと細かい部分を言うと、例えばエアコンのダクト部分。
壁に穴を開けてダクトを外部の室外機と接続をしますが、その穴の部分へパテなどの充填剤を詰め込み隙間を無くしたり、
壁内部へ設置するコンセントボックスの隙間をテープや充填剤などで埋めて壁内の空気が室内へ入ってこないようにしたりと
細かい部分まで気を配らないと、本当の意味での気密性は確保ができません。
また、建物の気密を確保するということは同時に、しっかりとした換気を行う必要も出てきます。
断熱の基準について
年代・場所ごとに、断熱性能の基準が設けられています。
極端な話、北海道と沖縄で同じ断熱性能であれば、北海道は寒過ぎて過ごすことができません。
また、断熱材 自体の性能も日々進化をしているため、10年前と今では、基準値も上がっています。
断熱の基準年表
新築などで”断熱等級”と言う言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、
平成28年基準(建築物省エネ法)の建物が断熱等級4に値し、
平成4年基準(新省エネ基準)の建物が断熱等級3に値します。
大体 新築を立てる時の最低グレードは等級3が多かったですが、最近は等級4が標準化している印象です。
そしてその上に断熱等級5として、ZEH基準が2022年4月から設けられ、
2022年10月〜断熱等級の6.7も新たに設定されます。
話を戻します。
リフォームの場合、既存の状態が断熱材が入っていなかったり、サッシがアルミサッシ+シングルガラスの場合が多いです。
どこまでやるか?は予算と計画範囲によりますが、仮に平成4年基準(断熱等級3)であっても、終わった後の過ごしやすさの違いは大きく感じられるかと思います。
リフォームの一般的な断熱基準は平成4年基準が多いです。
”リフォーム”だから平成28年基準やZEH基準の断熱材を使うことは滅多にありません。
なぜなら”断熱材”だけ基準を上げても、建物全体の断熱性能が担保されるわけではないからです。
気密性や換気など、建物全体を考慮し断熱性を高めるため、既存の建物を”リフォーム”でそこまでのレベルに持っていくことはほぼ不可能だからです。
どうしても等級を5にしたい!のであれば建替えをオススメします。
しかし、一昔前までは「冬が寒い」という悩みを多く聞いていましたが、
温暖化に伴い「夏が暑い」に変わってきています。
そのため、リフォーム工事でも平成28年基準の断熱材を使用し、換気や気密性を計画・確認・提案する会社も出てきています
地域別 断熱区分け
地域ごとに断熱基準が設けられています。
各エリアまで書き込むと、情報量が多くなるので省きます。
お住まいの地域が何番に値するのかは担当営業マンに聞いてみてください。すぐ答えてくれるはずです。
北海道や東北地方は、沖縄などに比べて同じ基準の中でも、特に寒い地域と設定されています。
ちなみに、上の方で”ヒートショック”について書きましたが、ヒートショックが頻繁に起きているのは、
”特別寒い地域”=”北海道や東北”と思われますが、実は違います。
この表から見てわかるように寒い地域では、しっかりとした断熱対策がそもそも行われているため死亡率は高くありません。
逆にそこまで寒くなく、基準でも6や7にあたる地域の 和歌山や宮崎、愛媛、栃木 の方が死亡率は高いです。
このことから、注意しないといけない地域は、
特別寒い1や2の地域ではなく、”断熱性能が不足している”5・6・7の地域です。
ちなみに平成28年基準では1〜8と表記されます。
平成4年基準はⅠ〜Ⅵの表記になります。
ちなみに私の場合は、建物調査を行い、その結果をご報告するときに断熱地域は◯番です。とお伝えしています。
断熱材の種類について
断熱材には色々な種類があります。
その中でも戸建用としてはとりあえず3点を覚えておけば大丈夫です。
1つ1つの細かい説明は別記事で説明します。
- ウレタン 系断熱材
- ウール系 断熱材
- 吹付系 断熱材
床はウレタン系の板状断熱材
壁・天井はウール系の断熱材
時と場合により、吹付断熱も利用します。
【参考】外壁・屋根の塗装にて遮熱
ここまで建物の内部や外部の断熱の話をしましたが、+α で外壁や屋根の塗装で、外からの熱を遮熱する考え方もあります。
※断熱ではなく、遮熱です。
塗布する塗料自体に遮熱性能があります。たとえば屋根の塗料にしても、
上の図のように、建物内の断熱をしっかりしたうえで、さらに屋根にも直射日光による熱を遮熱する効果を持たせることで
建物内への熱の侵入を防ぎ、建物内を快適な空間します。
外壁も同じです。
遮熱塗料を外壁に塗布し、外気温を塗膜で遮断し、室内温度を快適にします。
まとめ
ここまで読まれた方は、もう基礎はOKです。
もっと深掘りすると
「熱伝導率が・・・」や「吹付断熱は小屋裏にした方が良いのか?天井裏なのか?」など、言い出すとキリがありませんが、
まずはここを押さえておくことで打ち合わせの際などには役立つと思います。
断熱工事はわりと大掛かりな工事になることが多いので、しっかり検討して計画していきましょう。